胃潰瘍
胃潰瘍に代表される消化性潰瘍の罹患率は減少傾向にあるとみられています。ヘリコバクターピロリ菌の感染者の減少や除菌治療方法の確立によるところが大きいと考えられています。
しかし腰痛治療のための痛み止め、心筋梗塞の治療後血栓防止のため低用量アスピリンの服用などが原因となりできる消化性潰瘍は特に高齢者に増加してきているようです。そこで胃潰瘍について説明します。
胃潰瘍の症状
みぞおち(心窩部)を中心に痛み(刺されるような痛み、鈍い痛み)、もたれ感、吐き気、食欲不振、腹部の張る感じ(膨満感)などみられ特徴的な症状は見られません。また潰瘍が大きくても無症状で潰瘍からの出血により貧血症状、便が急に黒くなるなどの出血症状で初めて異常を感じる患者さんも意外に多く存在します。特に高齢者の方で痛み止めの連用、抗凝固療法継続治療中の方では無症状で胃潰瘍になっている方も多いようです。
胃潰瘍の診断
基本的には前述した、自覚症状に当てはまるときに消化器科を受診し、症状を説明して、胃内視鏡検査を受けることが必要です。鑑別すべき病気に急性の胃炎、ヘリコバクターピロリの感染による慢性胃炎、胃癌が挙げられます。特に症状が乏しく、貧血症状、便が黒いなどは胃癌との区別が特に必要です。若いころ胃潰瘍の既往がある、ヘリコバクターピロリの感染を放置していた人は胃癌の可能性も考えて内視鏡検査が必要です。
内視鏡検査で大半は胃潰瘍と診断できますが、潰瘍の形によっては組織採取をして細胞の検査で癌との区別が必要になることもあります。
当院で受診可能な検査
胃内視鏡検査
胃潰瘍の治療
胃潰瘍は、胃粘膜に障害をもたらす胃酸、ペプシンなど、胃粘膜を保護する働きの粘液、アルカリ分泌、粘膜血流などのバランスが崩れることにより粘膜損傷が亢進して、潰瘍を作ります。したがって、治療の基本は胃酸の分泌を抑え、粘膜保護する働きを強化することです。潰瘍が大きく、深くなると治療期間が延びます。そればかりか出血を伴う胃潰瘍に対しては内視鏡による止血を行う必要があります。大量に出血する場合、重篤な病気を併せ持つ場合は手術も必要となります。
痛み止めとして非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)の服用、低用量アスピリンの服用は胃粘膜防御機能の低下をもたらし、潰瘍形成の原因となるので、潰瘍治療の際には極力服用をやめることが重要です。また、NSAIDsやアスピリン服用時には予防的に胃粘膜保護剤、胃酸分泌抑制剤の服用が勧められています。
またヘリコバクターピロリの感染による胃潰瘍は、まず潰瘍の治療を行い、潰瘍が瘢痕期になったら再発防止のためピロリ菌の除菌治療をすることが推奨されております。
胃潰瘍は出血、消化管穿孔などの重篤な合併症を起こさない限り、治療できる病気です。思い当たる症状、既往のある方は当院消化器科にご相談ください。